安保と沖縄 2021年2月


◎基本は朝日新聞。補足で毎日新聞。

2日 横田基地(福生市など)の周辺住民144人が騒音被害に対する損害賠償などを国に求めた訴訟で、将来の被害への賠償や夜間・早朝の飛行差し止めを認めなかった高裁判決への上告を最高裁が棄却したことを受け、原告らが1日、立川市内で記者会見した。原告団は「人権侵害を最高裁が黙認した」と批判。再び提訴を検討しているという。

2日 馬毛(まげ)島(鹿児島県西之表市)への米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊基地整備計画についての賛否が争点となった西之表市長選で、計画反対を訴えた現職の八板俊輔氏(67)が再選を果たした。ただ「容認」の相手候補との差はわずかで、「国策」にどう対抗するか、難しいかじ取りとなる。

2日(毎日) 米空母艦載機部隊の陸上離着陸訓練(FCLP)を移転させるため、政府が約10キロ沖の無人島・馬毛島に自衛隊基地を建設する計画への賛否が最大の争点だった鹿児島県西之表市長選は、計画に反対している現職、八板俊輔氏(67)が接戦の末に再選を果たした。しかし、岸信夫防衛相は1日、記者団の取材に基地計画の重要性を強調。現時点で計画を変更する考えはないことを明らかにした。

4日 韓国国防省は2日、2020年版の国防白書を発表した。北朝鮮を「敵」と名指しするのは避けながら、弾道ミサイルの運用部隊が増設されたとの分析を示した。関係が悪化する日本については、2年前の白書の「同伴者」から「隣国」に表現が変わった。

4日 日英の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)が3日夜、テレビ会議形式で開かれ、インド太平洋地域における安全保障協力の強化などで一致した。海軍国・英国との協力で海洋進出を強める中国を牽制(けんせい)したい日本と、欧州連合(EU)離脱で域外との協力を探る英国の思惑が一致した格好だ。

9日 米軍那覇軍港(那覇市)の移設受け入れの是非が争点となった7日の沖縄県浦添市長選は、移設を容認する現職の松本哲治氏(53)が、移設反対の新顔を破り3選を果たした。松本氏は「苦渋の決断を理解いただいた」と手応えを口にし、支援した菅政権も移設を進めていく構え。一方、移設を容認しつつ、新顔を支援した玉城デニー知事は、支持勢力「オール沖縄」との関係で難しいかじ取りを迫られそうだ。

9日 8日午前11時ごろ、海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう」が、高知県沖で民間船と衝突した。潜水艦の乗組員3人が打撲などの軽傷。関係者によると、民間船は香港籍の貨物船で、接触に気づかなかったとみられ、けが人の情報はないという。通報を受けた海上保安庁が、詳しい状況を調べている。国の運輸安全委員会も8日、船舶事故として調査を始めた。

10日 海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう」が高知・足摺岬沖で民間の貨物船と衝突した事故で、第5管区海上保安本部(神戸市)は9日、そうりゅうの艦体を調査し、艦体上部の艦橋右側のへこみのほか、艦橋の右舷側にある「潜舵(せんだ)」が折れ曲がっていることを確認した。潜舵は海中での潜航や浮上時に使われる。

11日 沖縄本島最北端の景勝地「辺戸(へど)岬」(国頭村)で4日、米軍機の低空飛行訓練を住民が確認した。県内では昨年末以降、慶良間諸島(渡嘉敷村、座間味村)でも同様の訓練が相次ぎ、県が抗議したばかり。県議会は10日、臨時の米軍基地関係特別委員会を開き、駐日米大使や在日米軍司令官らに対し低空飛行訓練の即時中止などを求める抗議決議案をまとめた。本会議に提案し、可決される見込み。

11日(毎日) 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先、名護市辺野古の埋め立て予定海域で見つかったサンゴ類の移植を巡り、防衛省沖縄防衛局による特別採捕を許可するよう、農相が県に是正指示したのは違法だとして、県が取り消しを求めた訴訟で、県は10日、請求を棄却した福岡高裁那覇支部判決を不服として最高裁に上告した。

17日 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(陸上イージス)の代替艦をめぐり、ミサイル警戒に従事できる期間が年間126日と試算されていたことが、関係者への取材でわかった。陸上イージスは「24時間365日、日本全体をカバーできる」との触れ込みだったが、代替艦はその3分の1しかカバーできない計算だ。試算は昨年11月にまとめられたが、公表されなかった。

18日 3月末に期限切れとなる在日米軍駐留経費負担(HNS、思いやり予算)の特別協定について、日本政府は17日、現行水準に沿って1年延長することで合意したと発表した。来年度の日本側負担は2017億円。日米両政府は来週中にも現協定を改正する議定書に署名。日本政府は年度内に国会の承認を得たい考えだ。

19日 防衛省は18日、馬毛(まげ)島(鹿児島県西之表市)への米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊基地設置の計画をめぐり、訓練の騒音や工事に関する環境影響評価(アセスメント)の手続きを始めた。先月の市長選で計画反対を訴えた現職が勝利したが、菅政権は計画を進める意向だ。

19日 横須賀や佐世保に駐留する米海軍の艦船から排出された汚染水を、処理せずに日本の海に流したなどとして、米ワシントンの大陪審は16日、廃棄物処理会社の関東砿産(こうさん)(横浜市)代表取締役の今橋聡二郎容疑者ら3人を、詐欺などの罪で連邦地裁に起訴した。海軍との契約では、日本の法令に沿うように処理することが求められていたのに、怠ったなどとしている。

20日(毎日) 防衛省は、2016年施行の安全保障関連法で自衛隊の新たな任務となった他国の艦艇や航空機を守る「武器等防護」が、20年の1年間に過去最多の計25件あったと19日発表した。警護対象はいずれも米軍で、弾道ミサイルの警戒監視に当たる艦艇が4件、日本防衛の能力向上を目的とした自衛隊と共同訓練した航空機が21件。輸送や補給活動での警護はゼロだった。

24日 東シナ海などでのパトロールを担う中国海警局の役割と権限を定めた海警法が施行されて、間もなく1カ月。尖閣諸島周辺で海警船と向き合う海上保安庁は、じわじわと高まる中国の圧力に警戒を強め、日本政界でも新たな対応を求める声が高まるが、政府は緊張のエスカレートを懸念。独自の主張を強める中国に対し、難しい対応を迫られている。

24日(毎日) 在日米軍所属のヘリコプターが新宿駅(東京都新宿区)周辺の上空で、日本のヘリであれば航空法違反にあたる高度300メートル以下の低空飛行を繰り返している。毎日新聞は昨年7月以降、こうした飛行を12回、その疑いがある飛行を5回確認した。JRと私鉄を合わせた1日の乗降客が世界最多の約350万人に上る新宿駅の真上を地上約200メートルの高さで通過し、周辺のビルをかすめるように飛ぶこともあった。首都の中心部で危険と隣り合わせの飛行が常態化している。

25日 3月末で期限切れとなる在日米軍駐留経費負担(HNS、思いやり予算)の特別協定について、日米両政府は24日、現行水準に沿って1年延長する改正議定書に署名した。2022年度以降の負担額は今年、改めて交渉し、年内の合意をめざす。今後は対中戦略を練り直すバイデン政権との間で、新たな日米同盟の姿をどう描くかが焦点となる。

25日 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画に伴う名護市辺野古の海の埋め立てについて、7割が反対票を投じた県民投票から24日で2年。民意を背に玉城デニー知事は反対姿勢だが、現場ではこの日も土砂が投じられた。また、防衛省沖縄防衛局は24日、面積ベースで全体の4分の1にあたる南側区域(約39ヘクタール)への土砂投入が、早ければ4月下旬にも完了すると県に通知した。残り4分の3の区域は、軟弱地盤の判明により、県の新たな承認が必要となっている。

25日(毎日) 木更津市に防衛省から24日に入った連絡によると、陸上自衛隊が17機導入する米国製輸送機オスプレイの1機が同日、米軍岩国基地(山口県岩国市)から暫定配備先の陸自木更津駐屯地に到着した。同駐屯地への配備は3機目となった。

26日 沖縄・尖閣諸島をめぐる米バイデン政権の立場が注目を集めている。国防総省のカービー報道官は23日の会見で「尖閣諸島の主権について日本を支持する」と述べ、「主権については特定の立場を取らない」という、従来の米政権からの方針転換とも取れる発言をした。国防総省は「方針転換はない」としているが、歴代政権の中立的な立場にも触れておらず、日本への配慮をにじませている。

27日 中国海警局などの乗組員が沖縄・尖閣諸島に上陸しようとした場合の対応について、政府は25日の自民党会合で、正当防衛や緊急避難に当たらなくても、海上保安官らが相手に危害を与える可能性のある「危害射撃」を行うこともあり得るとの見解を示した。政府高官は「以前から確定している法解釈だ」としている。

27日(毎日) 在日米軍のヘリコプターが首都・東京で日本のヘリであれば違法となる低空飛行を繰り返している問題で、米海軍ヘリ「シーホーク」が渋谷駅周辺の繁華街や浜松町周辺のオフィス街で低空飛行をしている様子を毎日新聞が計5回確認した。大勢の人が行き交う渋谷センター街近くを低空で通ったり、東京タワー周辺を蛇行したりする飛行もあった。米陸軍ヘリ「ブラックホーク」が新宿上空などで低空飛行する様子も確認されており、都心の広範囲なエリアで危険な飛行が常態化していることが判明した。

28日(毎日) 岸信夫防衛相は27日、航空自衛隊府中基地(東京都)を訪れ、自衛隊初の宇宙専門部隊「宇宙作戦隊」を視察した。各国が宇宙での軍拡競争を進める中、岸氏は記者団に「宇宙空間の安定的利用に対するリスクが安全保障上の重要な課題だ。米国と連携し、宇宙利用の優位を確保するための能力強化に取り組む」と述べ、自衛隊の能力向上を目指す考えを示した。


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