労働と貧困 2020年12月


◎基本は朝日新聞。補足で毎日新聞。

2日 日本で働く外国人技能実習生の急増を受けて、朝日新聞社と東海大学の万城目(まんじょうめ)正雄・准教授(国際経済)は、地域住民に占める実習生の割合が高い全国100自治体の首長に共同アンケートした。自治体には法律で実習生の保護などが求められているが、そのための基礎データとなる実習生の人数を「把握していない」と答えた自治体が42%に上り、建前と現実の乖離(かいり)が浮き彫りになった。

2日 立ち食いそば店「名代富士そば」の運営会社が、グループ内の別の運営会社の店で働かせていた従業員を1カ月以上休業扱いとし、その間の休業手当について雇用調整助成金(雇調金)を申請していたことがわかった。会社側は取材に対して事実関係を認め、東京労働局に報告したと回答。雇調金を受給したかどうかは「不正かどうか労働局の判断を仰ぎ、その結果を踏まえて回答するか決めたい」としている。

3日 経団連は来春の春闘に向け、「一律のベースアップは困難」とする基本方針の原案をまとめた。この春まで賃上げに前向きな見解を表明してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて8年ぶりに否定的な姿勢に転換する。年内にも方針を決める。

4日 働き手が自ら出資し、経営に携わりながら働く「協同労働」のための法人格を新設する労働者協同組合法案が、4日の参院本会議で成立する見通しになった。非営利の労働者協同組合(労協)の設立ルールを定めるもので、地域の課題に合わせた事業を立ち上げやすくなり、地域活性化につながると期待されている。

4日(毎日) 組合員が資金を出し合って運営にも関わる「労働者協同組合」と呼ばれる非営利の法人形態を新たに認める法律が4日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。NPO法人などよりも簡単な手続きで設立でき、さまざまな事業を担える利点がある。人口減少に悩む地方を中心に、介護や緑化活動など多様な分野で新たな担い手となることが期待される。

5日 雇われて働く人が対象の国の労災保険に、事故などに遭う可能性がある個人事業主が特別加入できる制度について、厚生労働省は、俳優などの芸能関係業・アニメーター・柔道整復師の3業種を追加する方針を固めた。8日の労働政策審議会に示し、了承されれば来年度から実施する見通し。

8日 経団連は7日、会長と副会長が来春の春闘に向けた経営側の方針を話し合い、コロナ禍で業績が悪化している企業が多いことから「賃金の引き上げは難しい」との方向でまとまった。今年の春闘まではベースアップを含め賃上げに前向きだったが、8年ぶりに厳しい姿勢に転じる。対する労働組合の中央組織・連合は8年連続でベア目標を掲げる。例年以上に厳しい交渉になりそうだ。

9日 個人事業主が労災保険に特別加入できる制度について、厚生労働省は8日、俳優など芸能従事者・アニメーター・柔道整復師の3業種を追加する方針を労働政策審議会の部会に正式に示し、大筋了承された。来年度にも実施する見通し。

10日(毎日) 甲府市職員の向山敦治(あつじ)さん(当時42歳)が今年1月に自殺したのは長時間労働による過労が原因だったとして、遺族が9日、民間の労働災害に当たる「公務災害」の認定を地方公務員災害補償基金山梨県支部に申請した。遺族への取材で判明した。自殺前の2019年12月の残業時間は180時間以上と推定され、遺族は市に対し「労働環境を見直してほしい」と訴えている。

11日(毎日) 2010年の日本航空(JAL)の経営破綻をきっかけに、機長など乗員81人と客室乗務員(客乗)84人が整理解雇されてから今月末で10年になる。解雇された労働者と所属組合は「不当解雇であり、組合差別」と解雇撤回を求め続けている。10年前に解雇通告が出された9日に記者会見を行い、改めて職場復帰など早期解決を求めた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、解雇や雇い止めなど雇用情勢が厳しさを増す中、10年続く争議の行方が改めて注目を集める。

12日 男性の育児休業の取得を進めるため、厚生労働省は企業に対し、働き手に取得を個別に働きかけることを法律で義務づける方針を固めた。子どもが生後8週までなら、2週間前までの申請で取れる「男性産休」も新設する。取得を後押しする制度を整え、男性が休みたいと言いづらい職場の雰囲気を変える狙いがある。

15日 コロナ禍で普及したテレワークをめぐり、企業が頭を悩ませている。朝日新聞が先月おこなった主要企業100社アンケートでは、半数以上が今春以降の体制を続ける一方で、体制を縮小するか、やめていた企業が2割余りあった。社内の意思疎通や生産性の低下を課題に挙げる声が目立った。ただ足元の感染拡大を受けて、改めて取り組みを強化する動きも出ている。

17日 建設資材に含まれるアスベスト(石綿〈いしわた〉)を吸って中皮腫や肺がんになったとして、首都圏の元作業員と遺族ら337人が国と建材メーカー42社に計約120億円の賠償を求めた裁判で、最高裁第一小法廷(深山〈みやま〉卓也裁判長)は国の上告を退けた。国に約22億8千万円の賠償を命じた二審・東京高裁の判決が確定した。14日付の決定。同様の集団訴訟は全国で17件あり、最高裁の判断が出るのは初めて。

19日 トヨタ自動車グループの314労働組合でつくる全トヨタ労働組合連合会(組合員数約35万7千人)は18日、2021年春闘の要求方針案を固めた。基本給を底上げするベースアップ(ベア)について、要求の目安額の提示をやめる。ベアを要求しない労組が出ることも容認する。

20日(毎日) 高知県教職員組合と県高校教職員組合はこのほど、時間講師の勤務実態に関するアンケート調査の結果を公表した。アンケートからは、休暇が取りづらい実態や労働条件の説明が十分に行われていない現状が浮き彫りになった。

23日 うつ病など「心の病」が原因で、2019年度に休職した公立小中高・特別支援学校などの教職員が5478人、18年度に退職した公立学校教員が817人いて、ともに過去最多だったことが22日、文部科学省の調査で分かった。今年度は新型コロナ対応でさらに負担が増えており、働き方改革が急務だ。文科省は勤務時間の管理徹底や相談窓口の整備を進める。

24日 派遣社員や契約社員だからという理由だけで、テレワークの対象外にしてはいけません――。新型コロナ下で広がったテレワークの課題を議論した厚生労働省の検討会が23日、そんな報告書案をまとめた。勤務の「中抜け」を認めるなど、働き手がテレワークをしやすくする方向性を打ち出す一方、長時間労働を防ぐ労働時間管理は、しっかり行うように求めている。

24日(毎日) 新型コロナウイルスの感染が拡大した今春以降、テレワーク(在宅勤務)の間にけがをし、労働災害(労災)となる事例が生じている。毎日新聞が主要企業126社にアンケート調査をしたところ、少なくとも8社で労災の手続きを申請。うち1社で2件の労災が認定されていたことが確認された。テレワークは各企業で急速に導入が進むが、労務管理上の課題が改めて浮き彫りとなった形だ。

25日 公正取引委員会と厚生労働省は24日、企業など組織に属さずフリーランス(個人事業主)として働く人を保護するためのガイドライン(指針)案を公表した。フリーランスとの契約は独占禁止法や下請け法の対象になるという考えを初めて明文化し、発注時には取引条件を明確にする書面を取り交わすよう求めた。意見を募り年度内に策定する。フリーランスの働き手は増加しているが法的な位置づけがあいまいで、政府は、指針を策定する方針を打ち出していた。

25日(夕) 厚生労働省が25日に発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月より0・02ポイント高い1・06倍だった。改善は2カ月連続。ただ、厚労省は新型コロナウイルスの感染拡大による雇用への影響は遅れ気味に表れるとして、秋以降の状況を踏まえて「雇用が回復傾向にあるとは言えない」としている。
 求人倍率は、求職者1人あたり求人が何件あるかを示す。改善した理由について、厚労省は、11月の新規求人が前月より9・2%増えたことなどを挙げた。ただ、前年同月比(原数値)では21・4%減と厳しい状況が続いている。産業別では、宿泊・飲食サービス業が34・7%減、情報通信業が33・4%減と、前年同月からの落ち込みが大きい。
 また、総務省が25日発表した11月の完全失業率(季節調整値)は2・9%で、前月より0・2ポイント低下して2%台に改善。2%台は4カ月ぶり。完全失業者数は前月より16万人減の198万人となった。

26日 コロナ禍で迎える初めての年末年始に生活困窮者の増加が心配されるなか、厚生労働省が生活保護の積極的な利用を促す異例の呼びかけを始めた。「生活保護の申請は国民の権利です」「ためらわずにご相談ください」といったメッセージをウェブサイトに掲載し、申請を促している。民間の支援団体もこれに呼応して、SNSで一斉に利用を促すメッセージを投稿する試みを25日夜に行った。

30日 朝日新聞社は11〜12月、新型コロナウイルスをテーマに郵送方式の世論調査を行った。新型コロナ拡大後の生活感を4択で尋ねると、生活が苦しくなっていると「感じる」人は「大いに」12%、「ある程度」39%を合わせて51%に達した。「感じない」は「あまり」40%、「全く」7%を合わせて47%だった。

30日 今年の新型コロナウイルス関連倒産(負債1千万円以上)は、東京商工リサーチの29日の集計値によると843件に上った。ほぼ全てが中小・零細企業だ。感染拡大で消費が冷え込み、倒産は今後も増えそうだ。


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