労働と貧困 2021年2月


◎基本は朝日新聞。補足で毎日新聞。

2日 東京商工リサーチは1月21日に、昨年1年間に希望退職を募った上場企業は前年の2・6倍超の93社になったと発表した。今年募るところも1月末時点で28社が判明している。この勢いが続けば、年間で12年ぶりに100社を上回る可能性がある。

3日 2020年度に採用された公立小学校教員の採用倍率が、13自治体で2倍を下回った。全国平均は2・7倍で、過去最低だった。文部科学省が2日、調査結果を発表した。教員の大量退職期が続き採用が増えた一方で、学校現場の長時間労働などを嫌って民間企業をめざす人が増えたことが要因とみられる。

2日 東京商工リサーチは新型コロナウイルス関連の倒産(準備中や負債1千万円未満も含む)が1千件に達したと発表した。緊急事態宣言の1カ月延長が決まり、公的支援などでつないできた零細企業にとって、苦しい状態がさらに続くことになる。

4日(毎日) 大阪府警の捜査が違法だとして、労働組合が1100万円の賠償を府に求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は請求を退けた1審判決を変更し、府側に11万円の賠償を命じた。中村也寸志裁判長は捜索令状の請求が違法だったと認定した。
 訴えたのは全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(大阪市)。判決によると、府警は2015年、国の許可なくバスに有償で客を乗せた道路運送法違反の疑いで、同支部事務所などを捜索。支部側は捜索令状の請求要件を欠いたと主張したが、20年7月の大阪地裁判決は請求を棄却した。高裁判決は、バスの運行は一時的なもので、府警が同法違反の疑いがあると判断したのは合理的と言えないと指摘した。

5日 中小企業の働き手に限ってきた休業支援金の対象を、大企業の非正規雇用の働き手にも広げると、厚生労働省が発表した。2回目の緊急事態宣言が出された1月8日以降の休業分が対象で、2月後半から申請受け付けを始める予定。

6日 立ち食いそば店「名代富士そば」を展開するダイタングループの店舗運営会社が、未払い残業代の支払いなどを求めて会社側と対立している「富士そば労働組合」の委員長と書記長の幹部2人を1月29日付で懲戒解雇したことがわかった。労組側は「処分理由は事実無根」と反発し、解雇無効を訴えて争うとしている。

9日 内部通報制度の機能不全が疑われる日本郵政グループが、制度運用の抜本的な見直しを検討し始めた。外部の有識者からも課題を指摘され、近く改善策をとりまとめる。ただ、通報者が報復を受けた事件の検証や対応は、ほぼ「ゼロ回答」で不十分なままだ。失墜した通報制度への信頼を取り戻すのは簡単ではない。

8日 新型コロナウイルスの感染拡大で生活に困窮する人が増えるなか、生活保護を申請する際に福祉事務所が親族に援助が可能かを確認する「扶養照会」が申請をためらうことにつながっているとして、支援団体が運用の見直しを求める署名を厚生労働省に提出した。

9日 厚生労働省が発表した2020年の毎月勤労統計(速報値)によると、名目賃金にあたる労働者1人あたりの月額の平均現金給与総額は前年比1・2%減の31万8299円で、2年連続で前年を下回った。

9日 日本たばこ産業(JT)は国内の社員の約15%にあたる1千人規模の希望退職を募ると発表した。パート従業員への退職勧奨や福岡県内の2工場の閉鎖も公表し、グループ全体での退職者は3千人規模にのぼる見通し。国内のたばこ市場の縮小が背景にある。

10日(毎日) 東京女子医科大(東京都新宿区)が職員に対し、新型コロナウイルスの感染で休んだ場合、感染の原因によっては「休業中の給与を無給にする」との文書を出していたことが同大関係者への取材で判明した。「不適切な行為」で感染したなどと認められれば、「民法上の債務不履行に当たる」として無給にするという。ただ、「不適切な行為」が何を指すのか具体的に示されておらず、職員からは「恣意(しい)的に運用される」と懸念の声が上がる。

16日 NTTとKDDIは、バブル崩壊後の就職難に苦しんだ「就職氷河期世代」を中心に130人超の正社員を新たに雇用すると発表した。他企業での就職も支援し、合わせて300人超とする計画。同日から3月末まで募集する。

17日 大手自動車メーカーなど主要企業の労働組合が、春闘の要求書を一斉に会社側に提出し、今年の労使交渉が本格化した。新型コロナウイルス禍の打撃によって経営状況にばらつきがあるなか、各労組の要求内容も、業種などによって明暗が分かれている。

18日 企業が従業員に払う休業手当の一部を助成する雇用調整助成金(雇調金)について、コロナ禍のもとで上場企業が受給した金額のランキングを東京商工リサーチがまとめた。最多はANAホールディングス(337億円)で、運輸や旅行業界の大手が上位を占めた。外出自粛の影響で苦境に陥った企業が、雇用維持のために制度を積極的に使っている状況が見て取れる。

18日 日立製作所など電機大手の労働組合が今年の春闘の要求書を会社側に出した。NECやシャープなどの労組は前日に要求しており、産別組織「電機連合」に加盟する主要労組の要求が出そろった。賃金体系を底上げするベースアップを月2千円求めている。

23日 国が2013〜15年に実施した生活保護基準額の引き下げは、生存権を保障した憲法25条に反するなどとして、大阪府の受給者ら約40人が、生活保護費を減額した決定の取り消しなどを求めた訴訟の判決が22日、大阪地裁であった。森鍵一(もりかぎはじめ)裁判長は、厚生労働相の判断過程に「過誤、欠落がある」として裁量権の逸脱による違法を認定し、受給者に対する自治体の減額決定を取り消した。違憲かどうかは判断しなかった。

26日 生活保護を申請した人の親族に援助が可能かを福祉事務所が確認する「扶養照会」について、厚生労働省が運用を見直す通知を自治体に出した。照会が不要となるケースを「20年間音信不通」から「10年程度」に改めるなど、照会を限定的にする。「親族に知られたくない」として申請をためらう人が少なくないためだが、困窮者の支援団体などからは一段の見直しを求める声が出ている。

26日 東京商工リサーチは2月の新型コロナウイルス関連倒産(負債1千万円未満を含む)が126件となり、昨年2月以降で最多だったと発表した。

3月2日 総務省が発表した1月の完全失業率(季節調整値)は2・9%で、前月より0・1ポイント低下した。今回、過去にさかのぼって季節調整値が改定され、昨年7月以来6カ月ぶりの2%台となった。ただ、コロナ禍前の昨年1月は2・4%で、総務省は「改善したとまでは言えない」とする。
 厚生労働省が発表した、求職者1人に何件の求人があるかを示す有効求人倍率(季節調整値)は、1月は前月より0・05ポイント上昇して1・10倍だった。ただ、緊急事態宣言下で仕事を探す人が減った面もあるといい、厚労省も「雇用情勢が回復したとまでは言えない」としている。


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